こんにちは
村松 いさおです。
カウンセリングを受ける時、クライアントさんとカウンセラー、またそのカウンセラーが提供するカウンセリング方法についても、「相性」や「向き・不向き」があります。
また、カウンセラー自身も、クライアントさんとの信頼関係をきちんと築けるようにし、その上で、スキルや知識を磨くなど、(プロと名乗る以上は)研鑽を積まなくてはならないと考えています。
人の心や意識は目に見えないので、なかなかその辺り難しいものです。
今日は、そんなお話。
今日は無料お悩み相談サイト「ココロノマルシェ」に寄せられたお悩みにお答えしたいと思います。
カウンセリングの受け方について
はじめまして。
悩みというか、カウンセリングの受け方についての相談です。
カウンセリングで、自分の悩みを理解してもらえず、説教されたりして、余計に落ち込んだりしてしまいます。(メールカウンセリングも、対面カウンセリングでもあります。)
例えば、
「あなたの嫌われる原因は…」
「あなたの問題点はおそらくここ」
のように、私は、原因究明を求めているわけではなく、話を聞いてもらって、過去の嫌な出来事や感情を癒したい・慰めて欲しい気持ちの方が強く、そのためにカウンセリングを利用するのですが、それがいまいちカウンセラーに伝わりません。
「説教をされると、余計傷付くので、それはしないで欲しい。アドバイスではなく、話を聞いてほしい」のようにカウンセリングが始まる前に訴えても、「自分の話を聞いてほしいと、自分の欲求を押し付ける。そんな風に、相手のことを考えないから、あなたは人間関係のトラブルを起こすんですよ。長々と話を聞かされる側の身になったことはありますか?」のように、説教をされがちといいますか、何というか、私のメールの文面の揚げ足を取って、「ほら、こんなだから、あなたこうなるんですよ」みたいなことを言われてしまうんです。
それで結局、さっぱり話を聞いてもらえず、自分の悩みを話すよりも、カウンセラーの発言に対して、「いやそれはそういうことじゃなくて…」のように、説明する時間の方が長くなり、結局、自分の悩みは全く話せず、カウンセラーが一方的に話すのを、「はい、はい…そうですね…」と聞くだけで終わって、もやもやを抱えたまま、高いお金だけ払って終わりになるんです。
別のカウンセラーに相談すると、理解してもらえるときもあるのですが、その時はスッキリ心が晴れても、悩みがまたぶり返すことがあります。
そのとき、またその人に相談したいのですが、悩みを理解してくれた人に対して、何度も同じことを相談するわけにもいかないし、新しいカウンセラーに相談することになり、そうするとまた、理解してくれないカウンセラーに当たり、余計にひどくなったりと、堂々巡りをしてしまいます。
そして、自分の悩みを理解してくれたカウンセラーが送ってくれたメールの文面を何度も読みなおしたり、アドバイスを実践したりして、心を落ち着けるのですが、それでも、根本が解決されないのか、また悩みがぶり返したりして、そんなことをもう何年も繰り返していたりします。
どうしたら、カウンセリングがうまく行き、自分の悩みが晴れるのか?何か助言をいただけないでしょうか?
黒ヤギさん
黒ヤギさん、初めまして。
ご相談、ありがとうございます。
黒ヤギさんのお悩み、けっこうあるあるっちゃー、あるあるな話で、せっかく高いお金出してカウンセリングを受けたのに、良くなるどころか、不快な思いをしたというお話を、僕もクライアントさんから、たまに聴いたりします。
折しも、Yahooニュースのこのような記事があったので、参考までに、リンク貼っておきます。
なぜネット上に「野良カウンセラー」が跋扈するのか――自称可能な肩書が生む、メンタルヘルスの危険性
このよう件について、先日、とある心理学教授の話を聞く機会があったのですが、上記事のような「野良カウンセラー」の中には、記事にあるような「悪質な」あるいは「未熟な」カウンセラーもいますが、もちろん、良識があり、素晴らしいカウンセラーがたくさんいるもの事実です。
また、逆に公認心理士の中でも、いわゆる「資格」目当てで取得する方もおり、ほぼ経験が浅いため「未熟な」カウンセリングを行う方もチラホラいるらしいので、何とも言えません。とても難しい問題です。
この辺、「学校の先生」と似ている部分があるかもしれません。
「学校教諭」は資格であり、一定のスキルと知識の訓練を経ており、それなりに「職業レベル」を担保されているはずですが、例えば、民間の「塾講師」や「コーチ」と比較して、後者の方があっとー的に教え方が上手だったり、生徒の見極めがきちんとしていたりするケースも沢山あります。(もちろん、逆もしかりです)
結局は「カウンセラーによる」ということになってしまうかと思うんですよね・・・・
ただ、黒ヤギさんに限らず、まー、そんなご経験をされたら、カウンセラーやカウンセリングそのものに不信感を持ちますし、僕なんかも、上記の記事からすれば、「野良カウンセラー」の一人になるわけで、同じ対人援助職の業界で、細々ながらスミっこ暮らしをしている身としては、「いや、ほんと、すんません・・・・」という感じです・・・・。
僕自身も、色々カウンセリングを受ける中で、中には効果を全く感じられず、
「をい。金返せ!」
という経験をしたこともあるので、なんとなくお気持ちはお察しします。
うん、なんというか、お互い
「運が悪かった」
「ババを引き当てた」
という感じでしょうか。
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一口に「カウンセリング」「心理療法」と言っても、その種類や派閥は多岐に渡ります。
心理学とは「学」という名称はついていますが、人の心や意識は、目に見えたり、数値化したり、標準や基準を設けることができないため、数学や化学のように
「常に再現性が100%担保される」
というものではありません。(可能な限り100%の再現性を目指すため、今も多くの心理学者や研究家が努力しています)
また、人の心や意識は万民が同じというわけではなく、一人一人異なるため
「あの人に効いたものが、自分にも効果があるとは限らない」
のが実情です。
ですので、心理療法やカウンセリングにも、その方に対して
向き、不向き
があります。
(手法や心理状態だけでなく、人柄も含め、そのカウンセラーがそのクライアントさんに向いているか、不向きかということをきちんと把握するため、初回を「インテーク面接」として設定しているカウンセラーもいます。いわば、「相性判断」のようなものですね)
なので、黒ヤギさんの場合も、「自分にとっては不向き」なカウンセリング、あるいはカウンセラーに当たってしまったのかもしれません。
ただ、ここで考慮したいのは、自分にとって不向きだったけど、そのカウセリングが全く効果がない、あるいはそのカウンセラーがダメというわけでなく、別の方には効果がある場合もあり、やはり「相性」は重要な要素だと思います。
まー、そのカウンセラーが未熟だった場合も、もちろんありますが・・・・。
黒ヤギさんの場合は、
>原因究明を求めているわけではなく、話を聞いてもらって、過去の嫌な出来事や感情を癒したい・慰めて欲しい気持ちの方が強く、
ということですので、「傾聴」に特化したカウセリングを提供しているカウンセラーが良いかもしれません。
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「傾聴」特化型とは、来談者中心療法とも呼ばれ、カール・ロジャースという方が開発したと言われています。日本では比較的主流なスタイルのカウンセリング手法です。
クライアントさんの話を丁寧に聞くことで、共感的理解を深めながら、そのクライアントさん自身が自分の心理や気持ち、本当はどうしたいのか、どんな風にしていきたいのかなど心の動きや心理状態を、自分自身がカウンセラーに対して話していくうちに気がつき、理解し、変化を促していくという手法です。
これは、ロジャース自身が「人間そのものには自己実現する力が自然に備わっており、カウンセラーとはそれを信頼し、手助けし、導く役割」という考え方がベースになっています。
ですので、カウンセラー側も、ただ「ふん、ふん」と聴いているだけではなく、クライアンとさんと信頼関係を築きながら、その方が「自分で気がつき」やすいように促す技術が必要となり、傾聴特化型のカウンセラーさんは、そのための訓練や教育を受けています。(・・・・いるはずです。)
それに対し、精神分析的なアプローチをするカウンセリング手法もあり、僕も使っている提案型カウンセリングもその内の一つです。
傾聴型は、クライアントさん自らに「気づき」が生まれるため、自分自身や自分の心の内に対し、大きく理解と変化をもたらしてくれるのですが、そのぶん「時間」がかかるケースも多くあります。
問題や悩みは癒されるだけでなく、「気づき」を得て、そこから行動面あるいは心理面において何からしらの「変化」が生まれないと、現実的な「解決」には結びつけることが難しいのです。
傾聴型は、カウンセラー側が、「こんな見方もありますよ」「こうしたらどうですか」というような提案がほぼないため、比較的安全ではあるのですが、「変化」までの道のりが長く、黒ヤギさんもご経験されたように「悩みのぶり返し」が起きることもあり、そのため、比較的長期にわたり、継続的にカウンセリングを行う必要があります。(もちろん、問題の内容やクライアントさん自身、カウンセラーのスキルや知識によります)
提案型は心理分析を通じて、現在の悩みや問題の種になっているものをクライアントさんと共に探し、見つけ、一緒に解決していくアプローチ(精神分析型)や、反対に、原因究明にフォーカスするのではなく、未来における解決像を目指して、そのために様々な質問をしたり、気づきをカウンセラーが提供して行く解決志向型アプローチなどがあります。
カウンセラーがクライアントの相談に積極的に介入することで、比較的「短期的に」問題や悩みの解決を目指すのが特徴です。
黒ヤギさんがお会いになったのは、もしかしたら、このスタイルのカウンセラーだったのかもしれません・・・・。
その他にも、様々な心理療法やカウンセリング手法がありますが、どれが良い・悪い、優れている・劣っているというわけではなく、クライアントさんご自身や、あるいはその問題や悩みの種類になどによって、向き・不向き(相性)があるというのが、僕の見解です。
(ですので、カウンセラーによっては、様々な手法を習得し、クライアントさんによって使い分けている方もいらっしゃいます)
ですので、黒ヤギさんのようなご相談には、「傾聴特化型」が合っているかと思うのですが、いかがでしょうか。
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さて、黒ヤギさんは
>悩みを理解してくれた人に対して、何度も同じことを相談するわけにもいかないし、
と書いていただいていますが、一度のカウンセリングやご相談で解決しない悩みも多いので(という、そっちの方が多いので)、同じ内容であっても、同じカウンセラーさんに何度ご相談いただいても良いと思います。
たとえ、同じ内容であっても、前回との微妙な違いや、お話をされるクライアントの表情や様子などから、前回からどのように進展したか、あるいは変化があったのかをカウンセラーは読み解くので、それも大切なカウンセリングとなるからです。
傾聴型のカウンセラーの見つけ方ですが、そのカウンセリングルームやセラピストがどんなスタイル、手法をとっているかは、予約を入れる前に聞けば教えてくれると思います。あるいは、ホームページなどに掲載しているカウンセラーも多いと思います。
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黒ヤギさんにとって、相性が良いかどうかは、実際にセッションを受けてみないとわからない部分もあるのですが、一人、ご紹介するとすれば、明治大学教授の諸富祥彦先生を推挙させていただきます。
諸富先生は、僕のメンターの一人でもあるのですが、トランスパーソナル心理学や人間性心理学研究の第一人者として、また大学教授として後進の育成だけでなく、自身もセミナーやワークショップを開いたり、実際にカウンセリングセッションを受け付けてもいます。
すでに200冊以上の書籍を出されており、傾聴の書籍も何冊かあります。フォーカシングという手法と組み合わせた傾聴スタイルには定評のある方です。(もちろん、それ以外の療法にも深く精通しています)
どちらかというと、大学教授という印象ではなく、「変な面白いオジさん」という印象で(笑)、とても親しみやすく、またご自身も若い時に精神的な苦しみや問題を乗り越えてきた方ですので、心理学を「学問」「研究対象」としてだけでなく、「人の生き方」まで落とし込み、自分の「天命」とされており、とても愛に溢れている方ですよ。
この方からは「良いカウンセラーになるとは、心理学を生きること」と教わりました。
ご参考になれば。
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さて、ここからは、僕個人の意見としての見解を綴ってみたいと思います。当然、異論や反論もあると思います。
カウンセリングは「安心・安全」の場所である必要がある
というのが、カウンセリングの大前提であると考えています。なぜなら、カウンセラーとクライアントに信頼関係がないと、適切で効果的なカウンセリングにならないからです。
そのために、
クライアントを否定しない、攻撃しない。
クライアントを受容する
という姿勢が非常に重要になってきます。
ところが、カウンセラー側に心理的に「癒されていない痛み」があると、クライアントにその痛みを投影し、無意識の内に攻撃したり、否定したりすることがあります。
例えば、僕は元カノに振られたことが原因で、カウンセリングを学び始めたのですが、もし僕の中で「彼女に振られた」という傷が癒されていないと、
「すみません、彼氏をおもっくそ振ってやったんですけど・・・」
というクライアントさんが来た時に、自分の中の傷が疼き、
「はぁ?おまんらみたいなのが、人を傷つけるんじゃー!」
「振られた人間の事も考えない、自分勝手なやつじゃー!」
「おまんらみたいののおかげで、わしは!わしはなぁーーー!!」
と、怒りが出てくるのって、なんとなく想像つくでしょうか?(なぜに土佐弁?)
ですので、カウンセラーは「他人の心理的な傷を癒す前に、自分自身の傷をある程度癒す必要がある」と考えています。
(もちろん、完璧に癒すことなど不可能ですので、「ある程度」です)
そのため、カウンセラー自身も時折カウンセリングを受けたり、自分の手法やカンセリング姿勢などを第三者のカウンセラーに「スーパーバイザー」として意見をも求めることが必要となります。
僕も、ししょーを始め、他のカウンセラー方々のヒーリングセッションやセミナー、ワークショプを通じて自分自身の心の痛みを癒すことに注力していた時期もあり(というか、そうしないと自分が苦しいので)、おかげ様で色々癒されてきました。(元カノの傷を癒す時なんて、そりゃあ、大変だったですとも!まぁ、ラスボスは違ったのですが・・・)
ご相談文を拝見すると、黒ヤギさんの遭遇したカウンセラーさんにも、もしかすると「癒されていない痛み」があって、ひょっとしたら黒ヤギさんにそれを投影して、
>「自分の話を聞いてほしいと、自分の欲求を押し付ける。そんな風に、相手のことを考えないから、あなたは人間関係のトラブルを起こすんですよ。長々と話を聞かされる側の身になったことはありますか?」
>「ほら、こんなだから、あなたこうなるんですよ」
なんて、発言が出てしまったのかもしれません。
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カウンセラーも人なので、クライアントさんとの相性もあると思いますし、薬のように「100人いたら、100人ともに同じような効果が出る」というものでもないのが難しい部分でもあります。
ただ、僕たちカウンセラーもより良いカウンセリングやセッションを提供するために、常にスキルアップや知識などの学び、そして自分自身を癒し、様々な見解を広げる必要があると思っています。
また、「カウンセラーとは心理学を生きるもの」という教えの通り、知識・スキルだけでなく、それをカウンセラー自身が自己適用し、クライアントさんに「安心・安全の場」を提供すること、寄り添って、信頼関係(ラポール)を築くことが大切だと考えています。
というわけで、黒ヤギさんのご相談を機会に、自省を込めて、改めて自分と自分のカウンセリングを振り返ってみたいと思います。
黒ヤギさんにとって、相性ぴったりのカウセリングが見つかることを、切に願っております。
それでは、今日はこの辺で。
あなたの幸せのヒントになれば幸いです。
では。